2009年12月12日土曜日

神戸新聞の記事

11月13日(金)に、神戸大学に於いて開催された研究会の模様が、神戸新聞の記事になりました。
支援のためのサイトの方にも、発表者である呼びかけ人の二人から報告が為されています。

2009年11月7日土曜日

時評記事

ケルン市歴史文書館倒壊について、日本語で読めるものとして、現在までに時評記事が2本出ています。

ケルン市歴史文書館に関する研究会@神戸大学

11月13日(金)に神戸大学において、ケルン市歴史文書館に関する研究会が開催されます。詳細は、史料ネットのブログ http://blogs.yahoo.co.jp/siryo_net/30201314.html をご覧下さい。
  • 日時:2009年11月13日(金)17時30分~20時
  • 場所:神戸大学文学部B棟152教室(視聴覚教室)
  • 主催:地域歴史資料学研究会(科学研究費・基盤研究(S)「大規模自然災害時の史料保全論を基礎とした地域歴史資料学の構築」研究代表者=奥村弘の研究グループ)
  • 備考:参加費無料
  • プログラム
    • 報告:ヘルムート・へードル氏(グラーツ大学)「ケルン市歴史文書館の被害と復興の現状について」(仮)
    • 平松英人氏(ハレ大学)「ケルン市歴史文書館倒壊と市民アーカイブ構想」18時~18時40分
    • コメント:猪刈由紀氏(上智大学)
    • 司会:奥村弘氏(神戸大学)

2009年5月16日土曜日

救い出すべき史資料の値段

ケルニッシェ・ルントシャウ紙5月14日オンライン版
http://www.rundschau-online.de/html/artikel/1238775227540.shtml

(写真:倒壊現場の様子 dpa)

倒壊現場の地下鉄工事現場の地中奥深くに埋没してしまった文化財を救い出すには、おそらく数百万ユーロが必要である、とシュラマ・ケルン市長。市長によると現時点ではおよそ80パーセントの収蔵品が救出され、6月までにはさらに10パーセントが救出されるであろうとの見通しです。残りの10パーセントは、地下鉄工事現場の地中深く、地下水の中に埋まっているとみられ、その救出作業がコスト的に見合うかどうか慎重に考慮しないといけないと市長は発言しています。現在、技術的な問題が検討されており、6月には決定が下される見通しです。

ケルン市文書館広報担当者によると、試験的に地中を掘ってみたところ、残念ながらそこにも貴重な史資料が埋没しているとのことです。何を救出することができ、何が救出できていないかがわかるにはあと一年はかかる見通しです。「文書館職員はすべての収蔵品一つ一つを救い出すために戦っています。何年も地下水の中に埋まっていたとしても、文書類が失われてしまうとは限りません。第二次世界大戦中にエルベ川に沈んでしまった文書類が数年前に引き上げられましたが、まだ解読可能だったのです。」

同紙もシュラマ市長の発言に対して批判的なコメントを寄せています。
http://www.rundschau-online.de/html/artikel/1238775227564.shtml

「性急にあきらめてしまうべきではありません。最終的に寄付や地域を超えた文化資金が底をついたときにはじめて検討されるべきは、数年後に再び掘り出すことが可能になったとき、それまでに地中に埋まったままの史資料への被害ををいかに最小限で食い止めることができるか、という問題です。」

2009年5月10日日曜日

ゴミのコンテナから聖遺物

5月10日版Welt am Sonntagに、先日ケルン市およびNRW州に提出された日本人による文書館支援のための公開書簡および署名活動が紹介されています。

http://www.welt.de/wams_print/article3711093/Reliquien-aus-dem-Muellcontainer.html
(オンライン版へのリンクです。)

今回の署名は、ケルン市やNRW州、さらには連邦レベルの政治家に対して、ケルン市歴史文書館の援助、特にオリジナルの保全、修復に対し、さらなる実質を伴った措置を取るよう促す大きな力となってると報じられています。

追記

5月7日付Frankfurter Allgemeine紙の文化欄にも活動が紹介されました。

5月13日Koelnische Rundschau紙でも取り上げられました。
http://www.rundschau-online.de/html/artikel/1238775227263.shtml (オンライン版記事)

2009年5月4日月曜日

歴史文書館再建のための立地案続報

文書館再建に向けた立地に関しての続報です。Koelner Stadt Anzeiger紙オンライン版5月3日
http://www.ksta.de/html/artikel/1238966905949.shtml

先日FDPが文書館を倒壊現場に再建する案を提案したとの報道を紹介しましたが、このたびInnenstadt(都市中心部)の区議会でも、全会一致で倒壊現場に再建するよう求める提議を可決しました。これには、先のケルン市文化委員会会合でメッセ案が有力視されたこと対する対案の意味があります。「倒壊現場に文書館を再建することは、市民の誇りと自覚の表明になります」と区議会議員のVolker Goerzel(FDP)は強調しています。

区議会の議論では、その他の候補地として、Waidmarkt案やGereonshof案などが挙げられていますが、後者は費用がかかりすぎるということから多くの反対にあい、取り下げられました。

2009年4月29日水曜日

アーカイブ保全に全力

6月24日、ケルンで今後のアーカイブ保全の方策を協議するため、専門家会議が開かれます。ノルトライン・ヴェストファーレン州としても、国際的な課題としてのアーカイブ保全にむけた議論に積極的に参加する意向を表明しています。Koelner Stadt Anzeiger紙オンライン版4月15日
http://www.ksta.de/html/artikel/1239772086827.shtml

ユルゲン・リュットガース州首相は「ケルンのアーカイブは世界的な文化遺産です。中世以来の史資料は世界中の研究者にとって、計り知れない価値をもっています。ノーベル文学賞作家ハインリッヒ・ベルの遺品もしかりです。そのような文化遺産が、今後再び何らかの危機にさらされるということは決してあってはならないことです。そのためにも、研究者、州や国、さまざまな社会組織が、どうすればアーカイブを保全できるのかという問いにかかわらなければなりません」と呼びかけています。

ケルンでは専門家会議と三つのワーキンググループにより、アーカイブ保存に必要な特別な保存要件、可能な予防措置、マイクロフィルム化とデジタル化による史資料の保全というテーマが検討されます。その結果として、すべてのアーカイブに適用できる最低限の要件基準が示されることが求められています。

希望の地

Koelner Stadtanzeiger紙オンライン版が、新たな文書館の立地場所として、文書館倒壊現場に再建するという案がFDP自由民主党から提案されたと報じています。
http://www.ksta.de/html/artikel/1240406286721.shtml
http://www.ksta.de/html/artikel/1238966894863.shtml

意外な(驚くべき)ことに、同紙はFDPによるこの提案を好意的に報じています。
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「どうして私たちは今後投資家が見つかるまでの長きにわたって、ゼフェリン通りに残された空所とともに生きなければならないのでしょうか。ケルン市民の心にとっても、この穴が速やかに埋められることがいいに違いありません」とFDPのRalph Sterck氏は述べています。この提案は文化委員会に諮られることとなりました。

「もちろんそのためには、いつになれば事故現場の安全が完全に確立され、文書館再建のための準備が始められるか明らかにされなくてはなりません。この場所に文書館を再建する利点の一つは、すでにこの土地がケルン市の所有であることが挙げられます。」とSterck氏。

現在ケルン市当局では、新たな立地場所としてMessecityが有力視されています。

二人の犠牲者を出し、周辺住民を含めた多くの人々の生活を脅かしたこの惨事の場所に、再び文書館が再建されると聞けば、多くの人はまずたじろくのではないでしょうか。しかし、このFDPの提案には考慮に値する点があります。倒壊現場に文書館が再建されるということは、むしろ周辺住民にとっては新しい将来を約束する希望をもたらすのではないでしょうか。 合理的に考えてもこの提案は多くの長所があります。まずは市内中心という立地条件。拡大する収納スペースの問題に関しても、地下に十分な収蔵場所と、それに応じた人工的な空調設備の設置をみとめれば、十分に解決可能です。そして、市の所有地であるというコスト的なメリットもあります。
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はたして本当に倒壊現場に文書館を再建することは可能なのでしょうか。そしてケルン市民は本当にそれを望んでいるのでしょうか。仮に倒壊現場の安全性が十分に「確認」されたとしても、今回の惨事を引き起こした原因の地下鉄工事は今後も同じ場所で進められていきます。歴史文書館の再建にとって、その再建場所は今後の文書館のあり方にとって、非常に重要な決定になるでしょう。それには、一部の政治家、官僚、専門家だけでなく、広く市民をも巻き込んだ幅広い開かれた議論と、普遍的価値観と長期的・総合的プランに基づいた決定が必要とされているのではないでしょうか。

2009年4月25日土曜日

ケルン大学連続公開講義開催される

去る4月22日水曜日、ケルン大学で「ケルン都市史-ケルン市歴史文書館倒壊後」と題された、連続公開講義の第一回目が、講堂を埋め尽くした市民、学生のまえで開催されました。Koelner Stadt Anzeiger紙4月23日オンライン版からの要約です。

講師として招かれたケルン市歴史文書館Schmidt-Czaia館長が、文書館倒壊後70日を迎え、中間報告を行いました。それによると、楽観的な観測ではあるものの、70から80パーセントの収蔵品が倒壊現場から回収できる見通しとのことです。そして、少なくとも今後一年以内には臨時の閲覧室設立が目指されています。そこではまずマイクロフィルム化されている収蔵品がデジタル化され利用者に提供される予定です。新しい歴史文書館は2014年には完成することが望まれています。

2009年4月20日月曜日

アーカイブ救出作業、5月中にも完了か

Koelner Stadt Anzeiger4月20日オンライン版によると、文書類の救出作業は5月中にも完了する見通しだそうです。これは当初の予想よりもかなり早いことになります。
http://www.ksta.de/html/artikel/1239772089175.shtml

Schmidt-Czaia館長は、新しい文書館の建設場所が一日も早く決まることを期待しています。文書館関係者にとっては、将来への展望が必要であり、さらなる戦いを続けていくためには、相応の動機づけが必要であるという館長は訴えています。

さらに館長によると、瓦礫に埋もれた収蔵品のうち70から80パーセントは救い出すことができるだろうとの見通しです。それはドイツ内外のアーカイブからよせられた援助によるところが大きいと感謝の気持ちを表明しています。

2009年4月19日日曜日

ケルン大学歴史学講座I 夏学期公開講義

ケルン市歴史文書館倒壊を受けて、ケルン大学歴史学講座I主催による、公開講義が4月22日から7月8日にかけて、計7回開催されます。スケジュールは以下のとおりとなっています(Koelner Stadt Anzeiger紙による)。続報http://www.ksta.de/html/artikel/1238966835700.shtmlでは、ケルン大学とケルン市歴史文書館の関係が報じられています。大学からは200人以上の関係者がボランティアとして現場に駆けつけました。大学として長期的に学生と関心を持つすべての市民に、文書館再建にともに携わるよう働き掛けていかなくてはならないと、この公開講義を主催するJost Dülffer教授は強調しています。

4月22日(水) 18時15分~19時45分 講堂A2(Albertus Magnus Platz)
アーカイブ救出の現状について(Bettina Schmidt-Czaia ケルン市歴史文書館館長)
研究のためのケルン文書館史資料(Ulrich Soenius ライン・ヴェストファーレン経済文書館)

5月6日(水) 同上
ケルン犯罪史-15世紀から18世紀における犯罪と刑罰(Gerd Schwerhoff ドレスデン大学)

5月20日(水) 同上
「ケルン史」刊行事業の現在(Werner Eck 「ケルン史」編集委員)

6月10日(水) 18時30分~20時 講堂XXIV 大学本館
ケルン現代史-教育現場で得られた経験と研究のパースペクティブ(Ralph Jessenと学生達 ケルン大学)

6月17日(水) 18時15分~19時45分 講堂II 大学本館
民主制あるいは寡頭制?-中世ケルン市政の新体制 VerbundbriefとTransfixbrief(Eberhard Isenmann)

6月24日(水) 18時15分~19時45分 講堂A2(Albertus Magnus Platz)
デジタル化はアーカイブの未来か(Gerald Mayer バーデン・ヴュルテンベルク州立文書館)

7月8日(水) 同上
ケルンにおける外国人外食産業(Maren Moehring ケルン大学)

ケルン市歴史文書館150周年記念特別展

1857年、ケルン史上初めて歴史家Leonard Ennenが専任アーキビストに任命されました。2007年にはその150周年を記念して、ケルン市歴史文書館の展示室で特別展が開催されました。Ennen以降のアーキビストの仕事の様子、歴史文書館の収蔵品からふりかえるケルン市の歴史、さらには歴史文書館の将来像など、とても力のこもった展示だったと記憶しています。以下のリンクからご覧いただける図録は残念ながらドイツ語のみですが、掲載されている写真からその雰囲気が少しなりとも伝わってくるのではないでしょうか。
http://www.stadt-koeln.de/mediaasset/content/pdf44/150-jahre-historisches-archiv.pdf

ケルン歴史文書館デジタルアーカイブ

歴史文書館倒壊をうけ、以前から史資料のデジタル化とウェッブ上での公開の推進に取り組んできた組織prometheusと、ボン大学ライン地域史研究所とが協力して立ち上げたデジタルアーカイブです。ケルン歴史文書館の利用者が研究目的で所有している 文書館史資料の写し、コピー、マイクロフィルム、デジタルデータの情報を収集・整理し、それらを一般公開することで、利用者間で必要とする史資料にアクセスできるネットワークの構築を目指しています。

今後の協力体制、ケルン市立歴史文書館主体によるデジタル アーカイブ運営にむけた協議の結果、ケルン市とデジタル・アーカイブの主催者間で協定が締結されました。それによると、文書館収蔵品のコピーやデジタルデータの 所有者は誰でも、ケルン歴史文書館デジタルアーカイブに登録、公開できることとが正式に認められました。さらには、両者による緊密な協力体制をつくり、現 在の市民アーカイブとしてのポータルサイトの性格を保持したままで、将来的にはケルン市立歴史文書館の手による管理、運営に委ねられることになりました。

日本の研究者の皆様で、お手元に歴史文書館の史料をお持ちの方は、ぜひ以下のリンクからご登録をお願いします。

ケルン歴史文書館デジタルアーカイブ http://www.historischesarchivkoeln.de/